建設業でAIは活用できる?導入のメリットと有効な活用術
2025/12/03
建設業界では、少子高齢化による人手不足や長時間労働の常態化が深刻な課題となっており、生産性向上と働き方改革が急務となっています。
こうした背景から、AI(人工知能)を活用した業務効率化や安全性向上への期待が高まっており、国土交通省が推進する「i-Construction」をはじめとするDX施策においても、AIは重要な役割を担っています。
本記事では、建設業界が抱える課題とAI導入のメリット、実際の活用事例、そして今後の可能性について体系的に解説します。
AI導入を検討している企業の担当者や経営者の方々にとって、実務に役立つ知見を提供いたします。
建設業界におけるAI活用の可能性を理解し、自社の業務改善に役立てたい方には、現場のDX推進をサポートする施工管理アプリPRODOUGUの資料が参考になります。
建設現場では、写真整理や図面確認などの"ちょっとした作業"が積み重なり、大きなムダや残業につながります。こうした課題を解決し、現場の効率化を実現するのが施工管理アプリ「PRODOUGU」です。
導入メリットや活用事例をまとめた資料を無料でダウンロードしてください。
建設業界でAI活用が
注目される背景
建設業界では、労働環境の厳しさや人材不足といった構造的な課題が長年にわたり指摘されてきました。
近年、これらの課題を解決する手段としてAI(人工知能)の導入が注目を集めています。
まずは、建設業界が直面している現状と、AI活用が期待される理由について詳しく見ていきましょう。
建設業界が直面する深刻な人手不足
建設業界における人手不足は、少子高齢化の進行により年々深刻化しており、外国人労働者の雇用などの対策を講じても根本的な解決には至っていません。
日本全体の労働人口が減少する中で、建設業界は特に若年層の入職率が低く、離職率が高い傾向にあります。
これは長時間労働や肉体的負担の大きさ、休日の少なさといった労働環境の厳しさが主な要因です。
国土交通省の調査では、建設業就業者数はピーク時から大幅に減少しており、今後も技能労働者の不足が続くと予測されています。
この状況下で、AIやロボットによる自動化・省人化は、業界の存続に関わる重要な課題です。
高齢化と技術継承の課題
建設業界では就業者の高齢化が進んでおり、熟練技能者の大量退職に伴う技術継承の断絶が危惧されています。
建設現場では、長年の経験によって培われた職人の技術や勘が品質を支えてきましたが、若手の入職者が少ない現状では、こうした暗黙知を次世代に伝えることが困難になっています。
建設業では就業者の高齢化が著しく、若手の入職者も少ないため、熟練技能者が持つ技術の継承が困難になっています。
AIで熟練者の作業をデータ化し、教育・訓練に活かすことで、効率的な技術継承が期待されています。
長時間労働と業務の非効率性
建設業界では長時間労働が常態化しており、特に従来の非効率な作業プロセスが労働時間の増加を招いています。
設計図面の作成や修正、各種書類の作成といった業務は、依然として人手による作業が中心であり、設計変更が発生するたびに膨大な時間を要します。
また、複数の関係者間での情報共有が紙ベースや個別のファイル送付で行われるため、コミュニケーションロスや二度手間が発生しやすい状況です。
建設業は他産業に比べて労働時間が長く、2024年4月から適用された時間外労働の上限規制への対応も切迫した課題です。
AIによる設計業務の自動化や情報共有の効率化は、労働時間削減の有効な手段として注目されています。
国が推進するi-Constructionとは
国土交通省が主導する「i-Construction」は、ICT・AI・ロボット技術を活用して建設生産プロセス全体の生産性向上を目指す国家プロジェクトです。
2016年に開始されたこの取り組みは、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までのすべての段階でICT技術を活用し、建設現場の生産性を2025年までに20%向上させることを目標としています。
i-Constructionの具体的な施策としては、ドローンやレーザースキャナーによる3次元測量、ICT建機を用いた施工、3次元データを活用した検査の効率化などが挙げられます。
また、BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling)の活用推進により、設計段階から3次元モデルを構築し、関係者間での情報共有を円滑化することも重要な柱となっています。
国によるこうした後押しが、建設業界全体のAI・ICT導入を加速させています。
建設業界における
AI活用の具体的事例
建設業界では、大手ゼネコンを中心にAI技術の導入が進んでおり、様々な分野で実用化が始まっています。
ここでは、国内主要4社の具体的なAI活用事例を紹介し、それぞれの取り組みがもたらす効果について解説します。
これらの事例は、建設業におけるAIの可能性を示す先進的な取り組みとして参考になります。
株式会社竹中工務店のAI活用事例
株式会社竹中工務店では、生成AIを活用した社内ナレッジ検索システム「デジタル棟梁」と、ドローン+赤外線カメラによる外壁診断システム「スマートタイルセイバー」を導入しています。
「デジタル棟梁」は、社内の膨大な資料からAIが最適な回答を提示するシステムで、若手技術者でもベテランの知見にアクセスでき、技術継承と業務効率化を実現します。
「スマートタイルセイバー」は、ドローンで撮影した外壁画像をAIが解析し、タイルの浮きなどを自動判定します。
足場が不要になるため、安全性向上と検査時間・コストの大幅な削減につながっています。
出典:ASCII.jp『「デジタル棟梁」の実現に向け、竹中工務店がAmazon Bedrockを試用 (2/2)』
出典:IT Leaders『竹中工務店、建設業ナレッジ検索「デジタル棟梁」を生成AI「Amazon Bedrock」で構築』
出典:竹中工務店「外壁タイルの浮きをAIで簡易に調査・判定-スマートタイルセイバー®️-」
清水建設株式会社のAI活用事例
清水建設株式会社では、スマートフォンで撮影した画像をAIが解析し、鉄筋継手の検査を自動化する技術を実用化しています。
このシステムでは、スマホで鉄筋継手を撮影するだけでAIが施工状態を自動判定し、記録します。
従来1箇所あたり約5分を要した検査が約30秒に短縮され、精度も向上しました。
検査データはクラウドで一元管理されるため、品質管理の向上と業務全体の効率化につながっています。
出典:日経クロステック(xTECH)「工事検査にもAI進出、まずは鉄筋のガス圧接継ぎ手を20秒で判定」
株式会社大林組のAI活用事例
株式会社大林組では、AI×IoT技術を融合した「WellnessBOX」を開発し、スマートビル管理システムとして実用化しています。
このシステムは、ビル内の温度や照明、防犯設備などをAIが統合的に制御し、利用者の快適性と省エネを両立させます。
センサーが収集した利用状況に応じてAIが最適な環境を自動で作り出し、防犯カメラ映像の解析による不審者検知も行います。
これにより建物の付加価値を高め、管理業務の省人化にも貢献しています。
出典:大林組「IoT・AIを活用したスマートビルマネジメントシステム「WellnessBOX®」を東京都内のテナントオフィスビルに国内初適用」
鹿島建設株式会社のAI活用事例
鹿島建設株式会社では、溶接ロボットの導入による危険作業の自動化と、AI「K-SAFE」による災害予測システムを実用化しています。
AIを搭載した溶接ロボットは、最適な条件を判断しながら自動で作業を行うため、作業者の安全性を高め、品質も均一化します。
「K-SAFE」は、過去の労働災害データをAIが解析し、現場の状況に応じた災害リスクと対策を提示します。
現場監督者が事前に適切な安全対策を講じることで、労働災害の減少につなげています。
出典:鹿島建設株式会社「柱一本を全自動で溶接 新型のマニピュレータ型現場溶接ロボットを実導入
出典:鹿島建設株式会社『AIを活用した危険予知活動支援システム「鹿島セーフナビ®(K-SAFE®)」』
建設業界の現場では、写真管理や図面管理、情報共有の効率化も重要な課題です。
KENTEM(株式会社建設システム)が提供する施工管理アプリPRODOUGUは、クラウドベースで写真・図面データをリアルタイム共有でき、現場のDX推進をサポートします。
建設業界でAIを導入する
6つのメリット
建設業界にAIを導入することで、様々な業務改善効果が期待できます。
ここでは、生産性向上、技術継承、安全性向上、品質向上、人手不足解消、コスト削減という6つの主要なメリットについて、具体的な効果とともに詳しく解説します。
これらのメリットを理解することで、自社におけるAI導入の方向性を検討する際の参考になります。
生産性向上と業務効率化
AIを活用し定型的な業務やルーティンワークを自動化することで、人間はより高度な判断業務や創造的な業務に集中できるようになります。
例えば、図面のチェックや数量の積算、工程表の作成といった、従来は技術者が長時間かけて行っていた作業をAIが自動化します。
さらに、AIは24時間稼働できるため納期短縮に貢献するほか、過去のデータ分析から最適な工法や資材調達を提案することも可能です。
これにより、技術者は付加価値の高い業務に時間を割けるようになり、企業全体の生産性が向上します。
技術継承の円滑化
AIを活用することで、ベテラン職人の技術や勘をデータ化し、若手技術者への効率的な技術継承が可能になります。
人手不足と高齢化により、従来の徒弟制度的な技術継承は困難になっています。
AIは、熟練技能者の作業をセンサーやカメラで記録・分析し、言語化が難しかった「暗黙知」を可視化します。
このデータを教育教材として活用することで、若手技術者の早期育成を促し、技術継承にかかる時間を短縮できます。
安全性の向上
建設業界におけるAI活用は、ドローンやロボットによる危険作業の代替により、労働災害のリスクを大幅に低減します。
高所作業や危険区域の調査などをロボットやドローンに任せることで、作業員の安全を確保できます。
例えば、高層ビルの外壁点検にドローンを使えば墜落事故のリスクがなくなります。
さらに、AIによる危険予知システムを導入すれば、過去の災害データから危険箇所を事前に特定し、適切な安全対策を講じることが可能になります。
品質の安定化と向上
AIを活用した施工管理や検査により、ヒューマンエラーを排除し、安定した品質を確保できます。
人の体調や経験に左右されず、AIは常に一定の基準で判断するため品質の均一化が可能です。
例えば、コンクリートの打設管理や、人の目では見落としがちな微細な欠陥を画像認識AIで検出することで、品質不良のリスクを低減し検査精度を向上させます。
これにより、手戻り作業が削減され、顧客満足度の向上にもつながります。
人手不足の解消
AIとBIM/CIMを組み合わせることで、3次元モデルによる情報共有が進み、現場の省人化が実現します。
この手法では、3次元モデルをAIが解析し、設計ミスを事前に発見したり、最適な施工手順をシミュレーションしたりすることで、現場での手戻りや迷いを防ぎ、効率的な作業が可能になります。
また、遠隔からの進捗管理や検査も可能になり、監督者の移動時間を減らし人員配置を最適化できます。
これにより、限られた人材で多くのプロジェクトを管理できるようになります。
コスト削減の実現
AIによる最適化により、材料ロスの削減や工期短縮が実現し、人件費を含めた総合的なコスト削減につながります。
AIは過去のデータから必要な材料を高精度で予測し、過剰発注やロスを削減します。
また、天候や進捗状況を考慮して最適な工程を自動生成することで工期を短縮し、現場運営費や人件費を抑えます。
品質向上による手戻り作業の減少もコスト削減に寄与し、企業の競争力強化に直結します。
建設業界でAIと組み合わせる
主要技術
建設業界におけるAI活用は、単独で機能するのではなく、ロボット技術、ドローン、BIM/CIM、IoTといった他の先進技術と組み合わせることで、より大きな効果を発揮します。
ここでは、AIと融合することで建設業界のDXを推進する主要技術について、それぞれの特徴と活用方法を詳しく解説します。
ロボット技術との融合
建設業界では、AIを搭載したロボットが様々な作業を自動化し、3K(きつい・汚い・危険)作業の軽減と品質均一化を実現しています。
アシストスーツはAIで作業者の動きを予測して負担を軽減し、墨出しや溶接といった作業もAIが自律的に最適な判断・実行を行います。
これにより、熟練技能者と同等以上の品質を安定して確保でき、建設現場の省人化と作業環境改善に大きく貢献しています。
ドローンによる測量と点検
ドローンにAIを搭載することで、危険地域や高所における測量・点検作業を自動化し、測量コストの削減と安全性向上を同時に実現できます。
AI搭載ドローンは自律飛行で広範囲のデータを短時間で取得します。
取得した画像データはAIが自動で3次元モデル化したり、ひび割れなどの損傷を検出したりするため、人手をかけずに高精度な成果を得られます。
これにより、点検作業の安全性と効率が大幅に向上します。
BIM/CIMによる情報共有
BIM/CIMは建築・土木の3次元情報共有モデルであり、AIと組み合わせることで設計から施工、維持管理までを一元管理できます。
設計段階でAIがモデルを解析して課題を自動抽出し、施工段階では実況とモデルを照合して進捗を管理します。
維持管理段階では蓄積データから劣化予測も行えます。
プロジェクトのライフサイクル全体での情報活用により、品質向上とコスト最適化が実現します。
IoTによるリアルタイムデータ活用
IoT技術により機械・人・資材のデータをネットワークで収集し、AIがリアルタイム分析を行うことで、トラブルへの即応とプロセス最適化が可能になります。
建設現場の様々なデータをIoTセンサーで収集し、AIが分析することで、建機の故障予知や最適な作業スケジュールの提案、作業員の健康管理などが実現します。
IoTとAIの連携は、現場の「見える化」とスマート化を推進する基盤技術です。
建設業界における
AI活用の今後と注意点
建設業界におけるAI活用は今後さらに進化し、設計、工程管理、検査といった様々な領域で新たな可能性が広がっています。
一方で、特に生成AIの導入にあたっては、その限界や注意点を理解しておく必要があります。
ここでは、今後期待されるAI活用の方向性と、導入時に留意すべきポイントについて解説します。
設計業務への生成AI活用
生成AIは過去の設計データを学習することで、自動的に設計案を生成し、デザインスピードの向上と提案力強化に貢献します。
敷地条件や顧客要望からAIが複数の設計案を自動生成するため、設計の初期段階にかかる時間を大幅に短縮できます。
これにより、経験の浅い設計者でも質の高い提案が可能になります。
ただし、AIはあくまで支援ツールであり、最終的な判断や創造的な視点を加えるのは人間の設計者の重要な役割です。
工程管理の最適化
AIが天候データや進捗データを分析し、最適な工事スケジュールを自動生成することで、遅延防止と品質維持を両立できます。
AIは気象予報や現在の進捗状況をリアルタイムで分析し、最適な工程表を自動で更新・提案します。
遅延発生時にはリカバリープランを即座に提示し、複数現場の人員や機械の最適配分も可能です。
これにより、納期遅延リスクを低減し、限られたリソースを最大限に活用できます。
検査精度の向上
画像解析AIや生成AIを活用した自動検査により、検査工数が削減されるとともに、検査精度の向上も期待できます。
カメラやドローンで撮影した画像をAIが解析し、ひび割れなどの異常を人間が見落としがちな微細なレベルで検出します。
これにより検査時間を短縮しつつ精度を高めます。
また、生成AIによる報告書の自動作成なども期待されており、品質管理レベルの向上が実現します。
生成AI導入における注意点
生成AIには現場特有情報の欠如や情報精度の限界といった課題があり、専門家による検証が不可欠です。
AIは現場特有の条件を把握しておらず、誤った情報を出力するリスクがあるため、AIが提示する設計案や施工方法などは必ず人間が検証する必要があります。
また、機密情報の入力には情報漏洩リスクも伴います。
AIを人間の判断を補助するツールとして適切に位置づけ、協働させることが重要です。
まとめ
建設業界では、人手不足や高齢化、長時間労働といった構造的な課題に直面しており、その解決策としてAI技術の導入が急速に進んでいます。
国土交通省が推進するi-Constructionの後押しもあり、大手ゼネコンを中心に様々なAI活用事例が生まれています。
AIを建設業界に導入することで、生産性向上、技術継承の円滑化、安全性向上、品質の安定化、人手不足の解消、コスト削減という6つの大きなメリットが得られます。
また、AIはロボット、ドローン、BIM/CIM、IoTといった他の先進技術と組み合わせることで、より大きな効果を発揮します。
今後は設計業務へのAI活用、工程管理の最適化、検査精度の向上など、さらなる進化が期待されています。
ただし、生成AIには現場特有情報の欠如や情報精度の限界といった課題もあるため、AIが提示する内容を人間が検証することが不可欠です。
AIと人間がそれぞれの強みを活かして協働することで、建設業界のDXは真に実効性のあるものとなるでしょう。
KENTEM(株式会社建設システム)は、施工管理アプリPRODOUGUを通じて建設現場のデジタル化を支援しており、写真管理・図面管理・情報共有を効率的に進めることで、現場のスマートな働き方を実現します。
建設業界のAI活用やDX推進にご興味のある方は、ぜひ資料をご覧ください。
現場での写真撮影・整理・共有がスムーズにできれば、報告作業や確認の手間が減り、全体の進行がスピードアップします。「PRODOUGU」で“写真管理のムダ”を減らす方法を、無料資料で解説しています。
作業時間50%削減!
おすすめ記事
PRODOUGUに関する
無料相談(最大90分)
建築業向け施工管理アプリ「PRODOUGU」にご興味をお持ちいただいた方は、お気軽にお申し込みください。
業務効率化に関するご相談はもちろん、ご希望がございましたらPRODOUGU の機能をご覧いただくこともできます。









