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公共工事の入札の仕組みや逆転落札の概要や増加している背景を徹底解説

2024/10/08

土木

公共工事の入札で、最低価格を提示したにもかかわらず落札できないケースが増えています。
この現象は「逆転落札」と呼ばれ、公共工事の入札で増えつつあります。

なぜ、最低価格ではなく、より高い価格を提示した企業が選ばれるのでしょうか?

本記事では、公共工事の入札の仕組みから逆転落札の概要、そして増加している背景まで徹底解説します。 工事入札を入札するための取り組みも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

公共工事での入札の仕組み

工事を受注する際には、入札が行われます。
ここでは、公共工事と民間工事の入札の違いや入札方式を解説します。

詳しく見ていきましょう。

公共工事と民間工事の違い

公共工事と民間工事は、発注者や目的、契約内容など、さまざまな点で異なります。

公共工事は、国や地方自治体といった公的機関が、国民の生活や地域の発展のために実施する工事です。道路や橋、学校などの公共施設の建設や改修などが代表的な例です。

そのため、厳格な入札手続きや契約方式が定められており、透明性と公平性が求められます。
また、公共の利益を優先するため、価格だけではなく、技術力や社会貢献度なども評価される場合があります。

一方、民間工事は、企業や個人が、自社の利益や個人の目的のために実施する工事です。オフィスビルやマンション、工場などの建設が代表的な例です。
民間工事は、発注者と受注者の自由な交渉によって契約が結ばれることが多く、公共工事ほど厳格な規制はありません。

公共工事と民間工事の主な違いをまとめると以下のとおりです。

公共工事 民間工事
発注者 国、地方自治体 企業、個人
目的 公益 営利
契約方式 入札、随意契約 自由交渉

公共工事と民間工事は、その性質や目的が大きく異なるため、それぞれの特性を理解する必要があります。

公共工事の入札方式

公共工事の入札方式は、工事の規模や内容によってさまざまな種類があります。
代表的な入札方式には、以下のようなものが挙げられます。

総合評価落札方式
  • 価格だけではなく、技術力や過去の履行実績、地域貢献度などを総合的に評価し、最も優れた提案を行った企業を落札者とする方式
  • 工事の品質や納期、地域への貢献度なども考慮される
最低価格落札方式
  • 価格が最も安い提案を行った企業を落札者とする方式
  • 価格競争が激化し、工事の品質が低下するリスクがある
随意契約
  • 競争入札を経ずに、特定の業者と直接契約を結ぶ方式
指名競争入札
  • 事前に選定された複数の業者に対して入札を募る方式

どの入札方式を採用するかは、工事の内容や目的、地域の特性などによって異なります。

従来公共工事の入札では、「最低価格落札方式」が一般的でしたが、近年では、総合評価落札方式が採用されるケースが増えており、工事の品質向上や地域への貢献度を高めることが期待されています。

逆転落札とは?

逆転落札とは、公共工事で、最低価格を提示した業者が必ずしも選ばれないケースを指します。

通常、公共工事の入札では、最も低い価格を提示した業者が受注するのが一般的です。

しかし、価格だけではなく、業者の実績や技術力、品質も重要な評価基準となります。
この評価基準に基づき、最低価格ではなくとも総合的な評価が高い業者が選ばれることがあり、これを逆転落札と呼びます。

逆転落札の仕組みは、公共工事の質を確保するために導入されるようになりました。

価格競争だけではなく、工事の完成度や安全性、納期厳守などの要素も重要視されます。
これにより、公共工事の全体的な品質が向上し、長期的に見ても持続可能な工事が行われることが期待されています。

また、この仕組みは新規参入の業者や経験の少ない業者にとっても重要です。

低価格で入札を行う新規業者が増える一方で、実績や品質が問われるため、逆転落札の制度は公共工事の質を維持しつつ、新規業者参入の促進が期待されるからです。

実績のない業者が低価格で入札しても、品質が担保されない場合には選ばれにくくなるため、業者間の競争も健全化します。

このように、逆転落札は価格だけではなく、総合的な評価を重視し、公共工事の品質と信頼性を高める役割を果たしています。

公共工事の透明性や公平性の確保のためにも、逆転落札の仕組みは重要です。
適正な価格と高い品質を提供する業者が選ばれ、公共工事の全体的な信頼性が向上します。

逆転落札が発生する理由

逆転落札が発生する主な理由は、公共工事の品質を確保するためです。

価格だけではなく、業者の実績や技術力、品質管理体制も評価されることで、最低価格での入札に比べ、総合的に優れた業者が選ばれることが目的です。

また、低価格だけを提示する業者が品質を担保できない場合、逆転落札により質の低下を防ぐことにつながります。

逆転落札が増加している背景

逆転落札が増加している背景には、以下のような理由が挙げられます。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

価格競争が激化

公共工事の入札では、業者間の価格競争がますます激化しています。

予算削減の圧力が強まる中、工事費用を抑えたい発注者が増えています。
このため、業者は低価格を提示して受注を狙いますが、価格だけではなく工事の質も重要です。

担い手不足により、工事を実施できる企業が減少している一方で、公共工事の数は一定量確保されています。
この需給のミスマッチが、企業間の入札競争を激化させる原因につながっています。

また、公共投資の縮小は、各企業にとって受注機会の減少を意味し、経営悪化につながる企業も少なくありません。

少ない受注機会を確保するためには、他の企業よりも低い価格で入札する必要があり、価格競争はさらに激化する原因につながっています。

低価格入札が増える一方で、実績や技術力が不足している業者も多くなっています。

そのため、発注者は品質を確保するために、低価格ではなく、総合的な評価を重視した逆転落札を選ぶことが増え、価格競争の激化が逆転落札の増加に繋がっているのでしょう。

質の高い工事への評価

逆転落札が増加している背景の一つには、「質の高い工事」への評価の高まりが挙げられます。

従来の入札制度では、価格が最優先されがちでした。
しかし、近年では、工事の品質や技術力、アフターサービスなど、多角的な視点から評価されるようになってきました。

これは、公共工事の重要性が増し、単に安いだけの工事ではなく、安全で耐久性があり、地域に貢献できるような高品質な工事が求められるようになったためです。

また、住民からの工事の品質に対する意識も高まり、発注者側もそれに応える形で、入札制度の見直しを進めている背景もあります。

企業の信頼性と実績

逆転落札が増加している背景の一つに、企業の信頼性と実績が挙げられます。

企業の信頼性と実績は、逆転落札の重要な要因です。
発注者は、単に価格だけではなく、施工能力や品質管理体制も重視するようになりました。

過去の工事完了実績や技術者の保有資格数が評価の対象となり、高い評価を得た企業は逆転落札の可能性が高まります。

また、地域貢献活動や環境配慮への取り組みも加点要素となるかもしれません。

ISO認証取得やBCP(事業継続計画)策定など、企業の組織力も評価されるようになったからです。

価格はもちろんですが過去の実績や企業の取り組みなどが総合的に判断され、価格以外の面で高評価を得た企業が逆転落札を果たすケースが増加しています。

信頼性と実績を重視する傾向は、品質の高い公共工事の実現につながると期待されています。

公共工事を入札するための取り組み

公共工事を入札するための取り組みには、以下のようなものが挙げられます。

それぞれ具体的なポイントを見ていきましょう。

品質管理の強化

品質管理の強化は、公共工事の入札で重要な取り組みです。

多くの企業が ISO 9001などの品質マネジメントシステムを導入し、組織的な品質管理体制を構築しています。

現場では、定期的な品質検査や材料試験を実施し、規格に適合しているか厳密にチェックします。
また、専門の品質管理担当者を配置し、工程ごとの品質確認を実施する企業も増えており、今後はますます増加していくでしょう。

デジタル技術の活用も進んでおり、3Dスキャナーやドローンを用いた高精度な測量・検査も行われるようになりました。

さらに、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の導入により、設計段階から施工、維持管理まで一貫した品質管理が可能になっています。

さまざまな取り組みにより、工事の品質向上と不具合の未然防止が図られ、発注者からの信頼獲得につながっています。

従業員の労働環境改善

従業員の労働環境改善は、公共工事の入札をするために重要な取り組みとなっています。
従業員の労働環境改善が、工事の品質を高めるためには重要と考えられているからです。

環境整備として、多くの企業が、週休二日制の導入や残業時間の削減に力を入れています。
現場では、最新の重機やIoT機器を導入し、作業効率の向上と労働負荷の軽減を図っています。

安全面では、VR技術を活用した危険予知訓練や定期的な安全パトロールを実施し、労働災害の防止が以前よりも重要視されるようになりました。

さらに、女性や高齢者が働きやすい環境整備として、現場のトイレや更衣室の改善、軽量工具の導入なども進んでいます。

さまざまな取り組みにより、従業員の満足度向上や離職率の低下が実現し、技術者の確保・育成にもつながり、公共工事の入札での評価点の向上にもつながっています。

建設業のDX化の推進

建設業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化の推進は、公共工事を入札するために重要な取り組みです。
DX化により、業務の効率化とデータの精度向上が図られています。
主な導入技術と効果には、以下のようなものが挙げられます。

BIM
  • 設計から施工、維持管理まで一貫したデータ管理
  • 情報の共有化と作業効率の向上
ドローンとAI搭載測量機器
  • 高精度な地形データの収集
  • 工事進捗の迅速な把握
IoTセンサーを活用した遠隔監視システム
  • 作業員の安全管理
  • 機器の稼働状況のリアルタイム確認
VR技術を用いた施工シミュレーション
  • 事前の問題点洗い出し
  • 工期短縮とコスト削減

DX化の取り組みは、建設業界全体の生産性向上だけではなく、公共工事の入札での透明性と公平性の向上にも貢献しています。

まとめ

公共工事の入札での逆転落札は、単なる価格競争から脱却し、質の高い工事を実現するための重要な仕組みです。
企業の信頼性や実績、品質管理体制、従業員の労働環境、DX化の推進などが評価され、総合的に優れた提案が選ばれるようになっています。

この傾向は今後も続くと予想されるため、建設会社は技術力の向上と企業体質の強化に取り組む必要があります。
特に、品質管理の徹底やDX化の推進は、逆転落札を狙う上で重要なポイントとなるでしょう。
効果的な取り組みを行うためには、自社の工事実績を適切に管理し、強みを明確にする必要があります。

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